どうしようもなく体が重くてだるくてなんにもしたくない時がある。
 それは疲れ切っている時だったり悲しいなことがあった時だったりやるせない時だったり病気になっている時だったり、あるいはなんてことのないいつも通りを迎えた時だったり。
 きっかけはなんでもありでため込んでいたエネルギーがガス欠寸前で心よりも体が先にギブアップを知らせてくれるのだと思う。
 目を閉じるのが辛いような早く目を閉じてしまいそうなそんな時はまるで世界にひとりぼっちになったような大げさな寂しさに見舞われることもある。
 そんな苦しさと眠気の境目で、ふわりと頭にかかるあたたかい空気におかしいなと思う。ここには自分だけしかいないのに。いてくれたら嬉しいけれど、そんなはずはないのに。
 起こさないようにそっと頭を撫でる感触にその顔を見てみたいと思うのに重たい瞼は言うことを聞いてくれず、声を出そうにもままならない。
 それでもなんとかその人の名前を夢見心地に口にすれば空気が少しだけ震えた気がするのだから人の脳みそは都合がいい。
 おやすみと、望んだ人の声が優しく降り注ぎ、やっぱり都合がいいなと包まれるぬくもりに目を閉じた。


(夜更けに差し込む)