カーテンの隙間から光が差し込んでくる。してる時に明るいのは気恥ずかしいとお願いしたら閉めてくれたけれど隙間があったみたいだ。
 そもそもお昼からそういうことをしなければいいのかもしれないけどお昼間じゃないと家には家族がいる。早く大人になりたい反面、進路のことを考えたらこのままがいい気もしてくる。
 ぼんやりと隙間を見ていると差し込んできた光が公ちゃんの頭越しに届く。キラキラ。色素の薄い髪がさらに明るく見えてきれいだと思う。

「どしたの」
「公ちゃんがまぶしい」
「はい?」

 横向きになって私の背中側に手を回してた公ちゃんは少しだけ私から離れて顔を見る。何言ってんだこいつ、ってわかりやすい顔をしてるので説明してあげることにした。

「日の光でね、髪の毛がキラキラしてた」
「なんだ」

 納得というわけでもなく、私の言葉に興味をなくした公ちゃんに首を傾げる。それから髪の毛がキラキラ眩しいって言葉に拗ねたのかなって思い当たる。
 拗ねなくたって公ちゃんはかっこいいしかわいいし眩しいのに。

「公ちゃんもまぶしいよ」
「付け足しかよ」
「公ちゃんがまぶしいから髪もキラキラまぶしいんだよ」

 撫でれば柔らかい髪が指の間を通っていく。私よりも通りの良い髪は嫉妬を通り越して今では単なる羨望になった。いつかもし子どもができるなら公ちゃんの髪質を受け継いでほしいと思う程度の。

 一番最初、お互いに自分の体のことすらよくわからなかった頃とは違い、公ちゃんは名残惜しさの残るけだるげな余韻を一緒に味わおうとしてくれる。
 心臓が破けちゃうぐらいドキドキしてた頃は何もかもに必死で、それでいて好奇心でいっぱいで、私たちは溺れるようにかろうじて息をしていた。
 今は静かに、でも手放さないように、惜しむように、私たちは二人で深く長く溺れている。
 出会った頃は背丈もほぼ変わらなかった公ちゃんは今は私よりも背が高く、力も強くて、ぎゅっと抱きしめられたら私はその腕の中に捕まってしまう。その差がはっきりすればするほど公ちゃんはハッとして力を緩め、でも抱きしめた腕は離さないのだ。その度、いつまでも私のことだけ抱きしめてて欲しいと思ってること、公ちゃんは知らない。

「公ちゃん、かっこよくなったね」
「どしたのいきなり」

 とんとんと、背中を撫でる優しい手は私だけを撫でている。この優しさは私だけのもので、この心地良さを私はどろどろの独占欲で包み込んでる。生きてるって感じがする。

「ふふ」

 腰に回した指先でそっと公ちゃんの体の輪郭をなぞれば、公ちゃんの手のひらが背中から下へとなぞるように動く。
 君になぞられるのが好きでくびれができるように頑張ったこと、知らないだろうな。私だけの秘密だ。ひとつ、ふたつ。公ちゃんのこと好きになる度、公ちゃんの知らない好きが重なって積もっていく。

「笑いすぎ」
「公ちゃんがかっこいいのと公ちゃんが好きだからだよ」
「はいはい」

 全部全部、本当のことなのにな。
 そう思うけど肩越しにフッと笑う気配があったから適当な返事も許してあげることにした。





(かさなる秘密)