シャワーを浴びベッドにごろりと横になる。

「それで、どうだった?」

 待ち構えていたのだろう。聞きたくて仕方がなかったのだろう。質問はぐったり倒れ込んだ私にすぐさま浴びせられる。
 大層ご機嫌な相手はこれが目的だったのだ。にこにこ顔の彼氏に悔しさが先に立つ。
 優しく頭を撫でられて気遣われて腹が立つのはわがままなのだろうか。
 そうだとしても眉をひそめるし睨む。それも笑って受け入れることを知っている。

「むかつく」
「むかつくだけ?」

 大学の研究発表と防衛任務と隊長業務が重なる彼に何かできることはあるかと聞くのは彼女としての優しさだろう。ただし、聞いた瞬間好都合だと言わんばかりにとても良い笑顔を向けられ、してやられたと思ったが後の祭りだった。

「春秋のお願いは用心深く聞くことにする」
「ゆっくりするのも悪くないだろう?」

 その「ゆっくり」に閉口しているというのに!
 過密スケジュール明けの週末夜、春秋が望んだ通り予定を空けた。ゆっくりしよう、と言われたそのお願いという名の誘いにすること自体はわかっていたけれど彼の言う「ゆっくり」が言葉通りだとは思いもしなかったのだ。
 指先や唇で体中、触れていない部分はないぐらい丁寧になぞり辿られるなんて思いも寄らなかった。内側から蝕むような感覚の中なんとか抗議の視線を送っても、春秋の瞳は楽しげに怪しく光を灯し、その後もひどいと思わせるぐらい優しく丁寧な愛撫と共に行為を続けたのだった。
 感想を素直に口にすることのない私のことを春秋はもちろんわかっている。にこやかに私を見つめ、望む言葉を待っている。もとい、望む言葉を引き出そうとしている。

「返事は?」
「春秋の我慢強さに負けた」
「これ、一週間ぐらいかけてやるやつがあるんだけど」
「今言う?!」

 返事をするまいと意固地になる私の不意打ちを突いた春秋は私の頭を撫で、満足そうに、楽しそうに笑うのだった。





(おねだりじょうず)