滞在中の島ではなぜか船長と二人きりだった。なぜか、というよりは仕組まれたといっていい。も十代のような初々しさは持っていない。さらに言えば今そこかしこに野次馬がいることにも気づいていた。
「何するんですか」
「刀の手入れ」
「良い腕だといいですね」
「ああ」
そのまま何があると言うわけでもなく二人は街を歩き鍛冶屋を捜す。
は基本的に武器を使わないので鍛冶屋に行く必要も何もないのだがそのまま彼について行く。彼も特に何も言わない。ただ黙って進む。
「船長さん」
「何だ」
この船長さん呼びも彼がの名前を呼ばないのも以前の一件以降も変わらなかった。二人とも不自然なほどに自然だった。は彼の凄味ある応答にも負けることなく言葉を紡ぐ。
「船長、キャプテン、トラファルガーさん、ローさん、トラファルガー、ロー、ど」
「ロー」
ど、と発音した時点で返事が返って来ていた。どう呼ばれたいのかと、はそう尋ねるつもりだったのだが最も意外な返答の一つだった。
「本気ですか」
「本気だぞ、」
ニヤリと、その人の悪そうな笑みにはにこりと対してやる。
「ロー、あなたってよくわからないです」
「そっくりそのまま返してやる」
そのあとに二人ともよくわからないと思ったクルーたちの心の一言が続いた。
(ワンステップ)