最近船に乗って来た女は基本的にやる気がない。自分の好きなことや興味のあることにしか意欲を見せず大抵はめんどうくさがる。面倒を回避するための苦労なら躊躇わない。それ以外は常に逃げの姿勢である。
 なぜそんながこのハートの海賊団に乗っているのかと言えばそれは彼女が強いからだ。トリッキーな能力にこの船の船長が見込み連れ込んだ。
 最初は上記の通りの性分なので乗せたことを後悔しそうになった船長だが、幸い彼女は掃除が好きだった。プロのような掃除の仕方に誰もが唖然だったが以前よりも快適な海上生活になったのは彼女の功績だ。

「……そういや、って強いんだった」
「普段アレだから忘れてるけどな」

 呆然としていたのはハートの海賊団の面々。当の本人はケロリとした顔でそこに立っていた。疲れたと、疲れた様子もないのに肩を回したりしている。
 その彼女の周りにはおよそ五十人ほどの男が倒れ伏していた。

「これ、賞金もらえますかね?」
「その前にお前が追いかけられるな」

 近くにいた船長に問えば当然の答え。

「……誰かに代理させても駄目ですかね……」
「誰がこんなの引き受けるか。一般人ならなおさらな。行くぞ」
「……推定総計3000万ベリーが……」

 ため息のまま他の面子についていく。そんな彼女の日課は賞金首チェックである。

「やっぱ賞金稼ぎのが儲かったんですかねえ……」

 ぼそりと落とした言葉を拾ったのは後方にいたペンギンだった。振り返る。

「じゃあ、戻るか?」

 一言。短い言葉には笑った。

「それはもったいないです」
「そうか」

 心なし、嬉しそうに二人は並んで歩き彼らの船長の後を追った。






**おまけ(そのあとの彼女と船長)
「それで、どうして50人も相手にしたんだ」
「うちの悪口言われたので。……案外、私はこの船が好きらしいです」
「……そうか」


(感傷ごっこ)