「あー、うーん……」
「あれ、どうしたの?」
「ベポ!」
彼女にしては珍しい喜び様にベポは面食らいながらもどうしたのかともう一度問うた。
二人がいるのはの部屋の前である。元倉庫とも言う。
「取りたいものがあるんですけど……背が足りなくて」
そう言いは部屋に入り棚の一番上にある箱を指差した。人の視界には入らないところにあり随分と以前から忘れられたような雰囲気だった。
「よくみつけたね」
「たまたまなんですけど、気になって」
基本的にという人は己の利になることや興味が沸いたことでしか動かない。船では掃除が好きだからと船内を男部屋だろうが船長室だろうが好き勝手に入っては掃除をしている。彼女が来てから見違えるように奇麗になった船を知っているからこそ、抵抗していた者も今では渋々とだがの掃除を認めている。それには触るな開けるなと言われたところは言われた通り触らないし見ない。そこは彼女が興味がないからだがそういうところも認められた要因の一つではあった。
そのが自室で埃にまみれていそうな箱を発見したのだ。取る行動と言えばおのずと限られてくる。
「あの埃落としたいので……ベポ、肩貸してください」
「え?」
かくしてはじまった元倉庫部屋の再掃除。
「お前ら何してんの?」
「……肩車ですね」
「高いよねえ!」
部屋のドアが開いていたためにこの光景をキャスケットが目撃するまであと五秒。
(背のび)