「それでは、第……何回目かのによる修行講座を始めます」

 まばらな拍手。
 生徒はそれなりにいるのだが早く説明しろという声の方が圧倒的に多い。これは貴重な上陸生活を割いた講座だからと思われる。
 普段は小出しで教えていることをいい加減にまとめて教えろと多くのクルーがに文句を言ってくるのだが船上での生活ではなかなかまとまった自由時間が取れない。それに全員がこのように一堂に会することも仕事の割り振り上不可能だった。
 だから今回まとまった時間が取りやすい上陸中にこの講座が開かれた。
 あちこちから飛んでくる声を軽く無視してはじゃあ始めますと生徒の反応を気にせず口を開く。

「毎日私がしていることはいわゆる『瞑想』です。心を穏やかにして自分と向き合うということをしています。そのあとはいつも何か目標を立ててそれについて思いを巡らせています。それが、私とみなさんがたがいつもしていることです」

 何人かが頷いている。
 実際こうした自己を見つめる作業は普段怠りがちなのだがはそういった集中するという時が必要だという。何事も集中力が大事だと。そして自分が教えているのはその集中力を養う一つの手段だと。

「何人かには教えましたが、そのあとはめぐらせた想いを高め、より強く目標を頭に思い浮かべます。まあ、口に出す方が良いと個人的には思いますけど聞かれたくない人は心の中で思ってもかまいません」

 の知る迷信には言霊というものがあるがはそれは口にしない。どうせ早くしろと催促する声の方が大きいのだ。
 まだあるのかという面倒くさそうな大多数の視線には苦笑い。

「最初に想いを増し、思うことで形をはっきりさせ、次は意志をさらに高めます。そして最後には高めた意志を行動に移す。……そういうことをいつもしてました」

 半分近くはは何を言っているのかという胡散臭そうな目をしていた。ほかは興味がなさそうな者もいればうたたねしている者もいる。ごく一部は黙っての示した言葉を反芻しているのか考え込んでいた。
 多種多様な反応にはにこりと笑う。

「あくまで今言ったのは心の鍛錬です。技術は私の知ったこっちゃないので。もちろん、手合わせにつきあうこともできますがそれだけです。あとは何事もみなさん次第ですよ」

 そう締めくくりはさて、と声のトーンをかえた。

「で、お昼はどこでおごってくれるんですか?」

 ボランティア精神でこんな会を催したわけではない。当然、ものにつられただった。
 一人200ベリーだと徴収する声が聞こえは今日は贅沢できそうだとにやりと笑っていた。


(わたしだけの世界)