という人物は基本的に人のいる場所で眠ることはしない。眠っていてもわずかな気配で目を覚ます。
これにはクルーも驚いていたのだがは昔からこうであり人の気配に敏感でなければならない環境下で育ったのだと言えばひとまずはみな納得した。
そのが珍しく寝ていた。ローの医学書を手に、ローの部屋で。
最近のは熱心にローの医学書を読んでいて、仕事、修行、医学書と、他には食事や入浴以外はほぼそのローテーションだった。しかも本を借りて部屋に戻っているので睡眠時間も削っているらしかった。
「人の部屋でぬくぬくと……」
いつの間に入り込んだのかは医学書を持ったままソファで寝ていた。
ローは舌打ちしそうになりながらもずかずかとソファに近寄りその体を揺さぶって起こそうとする。
「お」
「…… 」
その瞬間にローは思わず動きを止めた。小さく漏れた声が彼の動きを止めていた。
「……」
「それ、私のご飯なんだけど」
もごもごと口にされる言葉に彼の機嫌は落ちていく。
敬語の抜け落ちた言葉遣い、かすれた声で呼んだのは誰の名だったのか。
「起きろ」
「っ! いった……!!」
「人の部屋で寝てんじゃねえよ」
いつにも増して低い声を出すローに寝起きのは目を丸くしている。
「どうかしました?」
「うるせえ」
知らぬは当の本人のみ。
おまけ(そのあとそのあと?)
「あー、嫌な夢を見ました」
「……あ?」
「私の大事なご飯を仲間に食べられたんです。昔それで取っ組み合いの喧嘩をしました」
「……ガキの頃の夢か?」
「? はい。食べるものに苦労して、それで手に入れたっていうのに自分の取り分を多くした子がいて、その夢でした」
「…………(はぁ)」
「どうかしました?」
「なんでもねえ」
(まどろみ)