二宮匡貴/WT



 糸が切れたように力なく伏せる背中を二宮は静かに見つめた。力任せに近い抱き方に悪態をつきながらも艶めいた声をあげるという器用なことをした相手の意識は今は遠くだろう。
 二宮の手はその僅かな隙を狙うようにゆっくりと後頭部に伸び、触れるギリギリを狙うように撫でた。その僅かな動きに彼女の体が一瞬揺れたことに気づき眉をひそめたが手は止めない。
 これが悪態をつかれる要因の一つであることを二宮は知っていたがそれでもしばらくの間壊れ物を扱うようにその頭を撫で続けた。