荒船哲次/WT
した後は頭が冴えることが多いからとしょっちゅう彼女を放置して全人類兵士化計画か何か知らないがそれなりに現実的な夢の計画に心を砕く男はそのうち蹴られると思う。
「てっちゃん、彼女放ったらかしてるとそのうち蹴られるよ」
「今蹴られてる」
「蹴ってない。添えてるだけ」
一人だけ起き上がってるメモを取るのにむかつく私は悪くないはずだ。頭の出来は良くて脳筋で仕事脳予備軍なのが悪い。固い背中に私の足の裏がぴたりとくっついてる。おかげでブランケットから太腿から先が丸見えだ。お行儀は悪いけどてっちゃんしかいないしそれに文句を言う人でもない。そもそも私に背中を向けているので見えていない。
ボーダーの隊員の一人一人が強くなる計画というのは良い考えだ。チーム戦で盛り上がっているとはいえ元々近界への備えで切磋琢磨しているのだから。効率よく戦える人が増えていくのならそれは前線で戦う私たちやボーダー全体はもちろん街にとっても良いことだ。良いこと尽くし。
でもそれと彼女との時間もそこそこに計画のアイディアに現を抜かすのは別問題だ。妬く先が世のためになる計画というのが悔しい。私は悪くないのに。
「てっちゃんの計画で強くなった人なんか私が全部一撃で沈めてやるもん」
「……良い考えが浮かんだんだって。構うから拗ねるな」
「拗ねてない」
「わかったわかった」
本当にわかってるのか怪しい調子だけどベッドに入って早々、その手が私の体の上で悪さを始める。構うの意味が違う。違わないけど。
む、と睨んでみても嫌ならやめるぞと自信満々な顔で聞いてくるのでその唇を塞ぎ腕を背中に回す。てっちゃんが口元に意識を取られて油断した瞬間、背中を強めに叩いてやった。