イルミ/HH

「こういう時君のこと殺さずキープしててよかったって思うよね」
「人のことなんだと思ってるの?」
「都合の良い女」

 人の心の欠片も持ち合わせない男の言葉にぐうの音も出ない。都合の良い女なのはその通りだからだ。
 イルミが針を刺さない程度に一人で戦えて敵意がなく彼の害にならない。暗殺でパーティ会場に出入りするのにパートナーがいた方が都合が良いからという理由で呼び出しに応じる。その女が都合が良い以外の何と言うのか。

「奇特な趣味だよね」
「その顔が好きなだけでイルミの中身にはさして魅力を感じてない」
「そういうの聞くと殺してもいいんだけどね」

 イルミの脅威になれない私は針一本でもちろん命が終わるが彼の都合の良い女はそれなりに条件付けがあり、今のところ条件に当てはまるのは私しかいない。いなければいないで執事を使うか他の策を使うのだが、その手間より多少反抗的な態度に目こぼしする方を選ばれていた。
 私もわかっているのでこの程度の文句は言う。大陸越えて呼び出しをかけられたのだからいくら都合が良い女としてもその程度の文句は聞いてほしいところだ。

「今日は立派にパートナーを務めるから殺すかどうかは後で考えてもらえる?」
「今日は必要だからとりあえず保留にしてあげるよ」

 尊大な態度にも顔が良いので私の方もとりあえずこれ以上の文句は口にしないことにした。