「じゃーん!」
 そう言って机の上にとんと置かれた箱は見たことのある形をしていた。四角い箱。
「どしたの」
「お誕生日おめでとう、高尾くん! 私と、真ちゃんの共同制作!」
 へらりと笑う彼女の言葉の選択が正しいようで何か違うと高尾は思ったが楽しげに箱を開けようとする姿にうんと頷いた。ではではと開けた箱の中見はやっぱりケーキだった。学校に手作りホールケーキ。型崩れがしにくいものを選んだのか、中にはガトーショコラ。プレートにはおめでとうとお菓子用のペンで書いたにしては達筆な文字。
「これ、プレートの文字が真ちゃんだ」
「あたり」
 器用だよねえとまるで自分のことのように自慢げに笑う彼女にだよなあと高尾もまた自分のことのように嬉しそうに笑う。当の本人はと言えばフンと鼻を鳴らして隣で本を読んでいる。
「ありがとな、真ちゃん」
「ケーキを作ると言ってきかないから、仕方なくなのだよ」
 うん、ありがとう。繰り返し礼を言えば後は無視されたのだが高尾は込み上げるものが抑えきれない。ゆるゆると頬が緩むのがわかったのか片手で口元を隠した。
「高尾くんの誕生日ね、真ちゃんがおしえてく」
「黙るのだよ」
 ええ、だって本当のことでしょうと幼馴染組ののん気な会話を聞きながらも高尾はふるふる震えていた。
「オレ、超しあわせかもしんない」
 良かったねえと笑う彼女と安い幸せだなと呆れ顔の真ちゃんこそ、16歳一番の贈り物だと、彼らは知っているのだろうか。きっと、知らないだろうから高尾はへらりと笑って大好きだぜーと軽口。

(おめでとうを君に!)