「今日のラッキーアイテムはピンクのゴムだ。、持っていただろう。借りるのだよ」
「こっちは青いハンカチだ。真太郎、借りる」
朝、緑間家で行われることは姉弟間による本日のラッキーアイテムチェックである。
ただ、弟はおは朝占いをその対象としているのだが姉はおは朝占いではなくきらきら星座占いをその対象としている。お互いの順位がかぶることこそあるがラッキーアイテムが被ることはほとんどない。なので姉弟の間でその日のラッキーアイテムの貸し借りはよく行われる。
「おは朝占いはまあ一目置いてるがきらきら星座占いには及ばないな」
「そっくりそのままお返しするのだよ」
テーブルで隣り合って朝ご飯のトーストを食べ終えるなり姉の一言、そこに弟の返し。
朝から仲が良いこと、と母親に見守られながら姉弟は今日も元気に占いの文言を守ることを始めている。
不幸中の幸いはそれぞれの占いの放送時刻がずれていてお互いがチェックする占いに関してチャンネル戦争が起こらないことだろう。もし放送時刻が被ろうものなら朝からそれだけで仁義なき戦いが始まるに違いなかった。
「今日の占いではの星座とは相性が最悪だから一切話しかけて来ないで欲しいのだよ」
「あいにく、こちらはお前と相性が一番良いから一緒に登校するぞ」
火花でも起こりそうな視線の交わしあいが行われる。両者譲る様子は一歩もない。姉と弟の無言の戦いに母は仲良しねと笑って、それから遅刻しても知らないわよ、と笑顔で爆弾を落とした。
その瞬間姉弟は一瞬で口をつぐみすぐさま立ち上がって玄関に向かう。
「母さん、早く言って」
「おい、これ以上近づくな」
「姉に向かって礼儀知らずな弟だ」
そう言いながらお互いが許容できる距離のまま家を出た子どもたちを見送って母はふう、と一息。朝から姉と弟は何かと言い合いが絶えない。
「本当、仲良しさんだこと」
否定の声をあげたがる子どもたちはもう、家の玄関からは見えなかった。
(お姉ちゃんと一緒)