青峰大輝という少年は実に態度がわかりやすい。すぐに顔に出る。
 今の彼は眉間に皺を作り目を細めて目の前の相手を睨むようだった。部屋であぐらを組んでいる彼の手の中ではバスケットボールがくるくると意思を持っているかのように移動をし、外に出たがっているかのように動き足りなさそうに腕の範囲で遊んでいる。
 実に退屈そうで、実に面倒くさそうだった。

「大輝、話聞いてる?」
「あー聞いてる聞いてる」

 今にも大あくびをしかねないほど彼は気だるげだが彼女はそこに気づいていないらしい。常の姉ならば人の話はちゃんと聞きなさいぐらいの注意はするはずだがあいにく今日の彼女は常の彼女ではない。
 クッションを胸に手にはタオル。さばさばした性格だと言われる彼女は見る影もなく、ひたすら泣き続けて既に三十分は経過している。

「本当に好きだったのよ」
「そうだないってたもんな」
「それが、後輩のかわいい女の子がよってきたらすぐ、すぐ!」
「おう」
「私のことは友達にしかみれない! また!」

 彼の姉は実に絵に描いたような運動部系かつ学級委員などの似合う明るくさばさばしたタイプと思われているが恋愛においてはその限りではない。惚れっぽいし失恋するとすぐ泣くし弟からするとこの上なく面倒な生き物だ。その面倒くささは時おり幼馴染みを上回る。
 なんでこんだけのことでさめざめ泣けるのか。
 それを言うと彼は一週間はご飯を作ってもらえなくなるのでただ黙って耐え抜く。

「もっと男見る目磨けよ」
「大輝みたいなのとは付き合わないし」
「あ?」
「ご飯」
「うぜー」

 早く飯作れるぐらいにはなれよ。
 言うとやっぱりご飯を作ってもらえなくなるので彼はただ黙って手の中のボールと退屈を紛らわすのだった。

(お姉ちゃんと一緒)