「冬って早く暗くなるね」
「はい?」
脈絡もなく喋りだすわたしを黒子くんは最初こそきょとんとしていたのだけど最近じゃ心得たとばかりにこちらの答えを待っている。
「それに寒いし」
「はあ」
「ちょっとぐらいいつもより近くてもあんま周り気にならなくていいね」
うんうんと、頷いて肩が触れないぐらい、たまにかすりそうなあたりで距離を取っていたらなにやら黒子くんが反対側の鞄をよいしょとかけ直す。そして私に近い方の手が動いて、そして、きゅっと、かたい手の感触。
「暗いし、寒いですから」
「……う、ん。寒いしね」
「そういうことです」
あきらかに私のために言い直してくれた言い訳に、私はすごすご甘えて、二人、ほんのすこしゆっくり歩いて帰った。
(言い訳)