駅の、よく使う通り道。むすっとした顔で大きなかばんを足元に置いて彼は立っていた。
「どうしたの」
「……仕事帰りだと思ったから」
後輩たちの前だと年長らしくしっかりものの青年が彼女の前だとほんのすこし幼さを見せる。その拗ねたようないじけたような幼さに彼女はいつも胸があたたかくなる。それからかわいくてかわいくて、いとしくてしかたがなくなる。ただ、かわいいと言うと彼はとても不満げなので彼女は笑うだけ。
「ゆき、一緒ご飯食べて帰ろうか」
ああと、素っ気なく頷く姿にまたいっそう彼女は微笑みながら彼のとなりに並んだ。
(たまには頼って)