「“ゆきくん”は昔花の指輪をくれてね」
「知らねえ」
「大きくなったらちゃんとけっこんするって」
「……」
 無視してバスケ雑誌を読むので唇を尖らせる。無視した振りなのはわかっている。
「かわいかったなー、“ゆきくん”」
「どうせ今は可愛くないからな」
「……ぶっ」
 もう私よりも大きくなったこの“ゆきくん”があまりにかわいくて吹き出した。
「幸男、私幸男のこと好きだから“ゆきくん”に嫉妬しないでよ」
「誰が」
「かわいいねー、ゆきくん」
「うっせ」
 ああ、私のゆきくんは今日もかわいい。

(かわいい君)