高校生の鞄ってのは無駄にでかく無駄に重いものって相場が決まってる。例に漏れず私も無駄にでかく無駄に重い鞄を肩にかけて朝のバスで立っている。誰かが動く度に鞄が当たってふらふらり。毎日ごすんごすん鞄が当たる度に地味に体力ゲージが減っていく。朝から戦闘は始まってる。
 ふらり。発車の勢いでたたらを踏むと後ろの人にぽすんと当たる。
「ごめんなさい」
 振り返ったら見慣れた制服がいた。目線を上にすると見知った顔だ。
「おは、よう」
「おう。大丈夫か?」
 女子に触ってどぎまぎしてたらしいけど私だとわかると彼は肩の力を抜いた。伊達に中学からの付き合いではない。
「笠松、バスこの時間なんだ」
「朝練があるからな」
「そっか」
 たまたまだったけど、この時間のバスも悪くないかもしれない。ふふっと笑うと背後でびくりと反応されたので今度は思わず吹き出した。

(偶然の幸福)