急に降りだした雨。傘はあいにく持っていない。雨が止むのを待つのも手だったが今日のドラマは見逃したくない。一瞬止まって、鞄からおもむろにジャージを取り出した。
「よし」
「よしじゃないだろ」
「あれ、笠松」
いたの、と驚けば笠松は呆れ顔だ。
「傘あるから」
「うん」
「……だから」
「笠松濡れなくてすむじゃん。よかったね」
「入れっていうことだ」
「……あ、そうなの」
「そうだな」
「じゃあありがたく」
そういって笠松のさした傘にひょいと入る。それがまたためらいのない動作で、笠松の方が思わず体を強張らせた。行かないのと、その声で我にかえる。行くか、と歩き出す姿はぎこちなかった。
「……あの人たち、付き合って結構経ちますよね」
「まあ笠松にしちゃ上出来だろ」
彼女を見つけた瞬間あのバカ、と一緒にいたバスケ部員には適当に帰ると言いっぱなした笠松は明日のからかいに頭を抱えることになる。
(相合傘)