なんで、どうして、なんて気持ちがそのまま出てきた顔をしている。彼女は実に彼の予想通りに動いてくれる。そうなるだろうと予測するというよりはそうであればいいと望む方向に。いつもとは違う感覚である。
「さ、寒いね、赤司くん」
「そうだね。さんは寒いのは苦手かな」
バスケ部の人間が聞けば卒倒しそうな口調に声色。
彼のお気に入りの小鳥はまだ寒さもはじめの頃なのに、既に顔を赤くさせている。
「そう、なの。寒いの苦手で。あ、あの、赤司くんと帰り道がおんなじになるなんて、初めてだね」
「そうだね。偶然だ。寒いのかな、随分と顔が赤いけれど」
「え、あ、うん、そうかも」
赤司くんはすごいね寒さに強そうだねでも風邪引かないように気を付けてそれからそれからと赤みを誤魔化すように赤司くん赤司くんと名を呼んでくるので、彼はひとつひとつ彼女に答えては彼女はその珍しさを知りもしないだろう、小さな笑みをこぼすのだった。
(偶然という必然)