こっち向かないかなあ向かないかなあ。
 窓際で、窓ばかり見る隣の席の男の子が、こちらを向かないかと淡い期待を寄せてはや数日。やっと、隣になれたのだ。
 周りからはなんでこいつと言われているけど、でもかっこよかったのだもの、というのが彼女の簡単な理由だ。
 部活見学をしていた4月、当然の顔をしてコートの真ん中に立つ姿がよく見なくても同じクラスの男の子で、思わず見ていたらそのまま目が離せなくなってしまった。
 それが今、彼女の隣の席で外ばかりみている"赤司くん"なのだった。
「赤司くん、外になにか見えるの?」
 勇気を持った朝のこと。あしらわれるかと思ったけれど返事はあった。
「面白くてかわいいものを見ている」
「……鳥?」
 窓から見えるのはすぐ近くにはえている木に止まる鳥ぐらいだ。他は特になにも。ずっと見るほどのものはない。
「まあ、似ているかもしれない」
 そう、とよくわからないまま頷けばほんのすこし、気のせいかもしれないけど"赤司くん"は笑って、また窓の方を見始めた。


 最近ご機嫌ねえと、聡いチームメイトの指摘に表情を崩すことなく赤司は頷いた。
「窓に見える景色は案外面白いな」
「……窓に?」
「そうだ」
「窓ねえ」
 はて、と首を傾げるチームメイトにそれ以上の質問は許さず、赤司はすぐに休憩を終えると練習に入った。

(可愛い小鳥)