その日、は午後からかくれんぼをしていた。おにはイルミだ。森の中で範囲を区切ってかくれんぼをしている。がいくら隠れてもある程度時間が経てば彼は必ずの隠れている場所の近くに現れ、はじっと気配を押し殺して隠れるのだがどうしても見つかってしまう。
「、気配消すのへた」
「また、見つかった」
本日三回目の発見。おにの交代はなし。以前一度だけ交代したのだが制限時間いっぱいかかってもはイルミのことを捜しだせなかったため、まずはが完全に気配を殺せるようになるまでおには他の人間がやることになった。今のところイルミはもちろんゴトーやミクリには見つかるばかりだ。カナリアとだけはお互い見つけ合う普通のかくれんぼの形になっている。
もちろん本人は知らないことだがこれは絶の訓練である。かなりの時点まできてはいるのだが完全にオーラを絶つに至ってはいない。
「次失敗したら針でツボ刺してあげるよ」
「!」
ほんの少し威圧的なオーラを出せばは全力疾走で逃げだした。イルミのオーラに対する反応はかなり素早い。念について知らないはずのだが危険であることはわかるらしく、逃げて隠れた場所で必死に気配を絶とうとしていることがオーラの動きでわかる。
「……特別強いわけでもないんだけど」
本当ならイルミがやらなくてもいいような訓練だ。それを彼がわざわざしてみるのはひとえにゼノの一言があるからなのだが彼はいまだにその答えを見つけられない。
は以前よりも妙に行動する時間が増えたことに喜びながらも訝しんでいるがイルミはもっと警戒して頭を働かせるべきだと思っている。理由なんて、彼すらわからないというのに。
「今度こそ絶成功か」
彼の弟たち、特に一番デキの良い弟に比べれば随分と気の長い訓練ばかりだが不可というレベルでもないのだ。ただ彼らの目指すレベルが高すぎるというだけで。
気配が消えたことをもう一度確認し、イルミはオーラのあった方向へ真っ直ぐ歩いていく。このまま相手の動きに動揺せず絶を保ち続けられれば、この訓練は成功。できなければどこに針を刺そうかといくつか候補を挙げていた。
「残念だけど、成功しちゃったね」
「?!」
しげみの中でじっと息を殺していたを見下ろしイルミはつまらなさそうに一言。
はよくわからなかったが文句を言われなかったためほっと一息。
「じゃあ明日からおにね。見つけられなかったらツボ刺すから」
鬼の一言だった。
(かくれんぼ)