チョコボを狙う魔物がいる。
 それを聞いていたものの、まさか目の前に現れるとは思ってもいなくて。私は近くにいた旅行公司のリンさんのそばにいるように言われてただユウナ一行の魔物退治を見守るしかなかった。



「……」
「戦いには、不慣れですか?」
「……はい」

 私以外の全員が戦っていた。
 戦うところを見るのは初めてではない。シーモアとベベルに行くときには何度も魔物と出会った。
 でも私はシーモアと一緒に魔物から一番離れた場所でただ事が終わるのを恐々待っていればよかった。隣ではシーモアが何の心配もなさそうに立っていたから、本当は恐くなかったのかもしれない。

「どうにも、あなただけは他の方と様子が違うようなので」
「私のわがままに、付き合ってくれてるんです」

 わがままに付き合ってもらって、何も返せてない。短い時間だけど、私がいなくてもこの人たちは大丈夫で、申し訳ない。

「それでも、あなたが先に進みたいのなら、進めばいいと思いますよ」
「……」

 リンさんは前を見据えたまま、ひとりごとみたいに口にした。
 非難でもなく、応援でもなく。私の心を読んだみたいだった。

「戦いはおろか旅にも慣れないお嬢さんが何もできないとわかっていてなお、進みたいのなら、それはわがままではなくなるかもしれません」
「……そう、でしょうか」
「そのために努力し感謝をすれば、もしかしたら」

 私たちが悠長に話している間にもユウナたちは魔物を追い詰めて、気づけば魔物は地に足をついていた。
 私は、シンに会って、倒すわけでもなく何をしたいのだろう。
 その先が見えなくて、それでもなにかわからない衝動に突き動かされて。

 わがままは、いつか別のなにかになるだろうか。なれるだろうか。



 消えていく魔物の姿を見ながら、私はただずっと見ているだけ。

(それを人は何という)