余っていたお金で少しでも見た目を誤魔化せればとローブを買い、アーロンさんとティーダの二人と一緒に召喚士ご一行の元へとやってきた私は簡単な自己紹介をし、ちょっとした回復しかできないので道具持ちを申し出た。
 召喚士の女の子、ユウナは私の急なお願いに首をかしげていたものの頭を上げない私に対して危険なことをしないことを条件に同行を許してくれた。
 他の面々の反応はさまざまだったけれど、私は退くわけにはいかなかった。きっとグラムは私をさがしているだろうし、見つかればきっと、またグアドサラムに戻ることになる。
 別に根拠なんて何もないのに私の中ではそういうことになっていたものだから、なんとか私は同行を許してもらえてホッとしていた。



「あの、ありがとうございました」

 ティーダとあの召喚士の女の子、ユウナが話している間、私はアーロンさんにお礼を言った。
 アーロンさんは黙っているけれど、アーロンさんがいなければ私はついていくことを許してもらえなかった。ほとんどアーロンさんの言葉添えがあったから許されたようなものだ。

「……こちらの都合だ」
「それでも、アーロンさんのおかげです。……でも」

 アーロンさんは私のことを紹介したとき、俺の都合で連れていくと、詳細は何も言わなかった。せいぜい、私に何ができるのかを言わせたぐらい。

「どうして」
「あ・は・は・は・は・は・は!」
「?!」

 突然響いてきた笑い声に全員が驚いた。
 声の主も周りの驚きように気まずくなったのか目をそらしたのだけれどそのまま開き直ってまた笑い始めた。
 そうすると隣で驚いていたユウナまでティーダの真似をして笑い出すものだから、もう誰もなにも言えなかった。

「……」

 盛大な笑い声に私はいろいろなものを吹っ飛ばされて、どうして私の同行を許してくれたのか、聞きそびれてしまった。
 多分、答えてくれなかったとは思うけれど。

「私、精一杯頑張りますから」

 ガードというわけではない。ただアーロンさんの言葉を借りて、ここにいるだけ。
 それでも、召喚士の覚悟を邪魔しないように。私の望むところが彼らと違っても、それまでは。

「ありがとうございます」

 もう一度深々と頭を下げれば、礼は一度で十分だという声。
 はい、と言いながらもまた、お礼を言ってしまって呆れられたけれど、それでも、世界でもう一度ひとりぼっちになる前に誰かに手を差し伸べてもらえた幸運は、得難いものだったから。
 何度でも、私はお礼を言いたいし、何度でも、私は力になれるなら、なりたい。そう、思う。



 こんな風にして、私と召喚士ユウナ一行との旅は始まった。

(はじまり)