宝石の森だ。キラキラ。星の森かもしれない。キラリ。きらめきが頭の上から降ってきそうなぐらいにこの森は輝きに満ちていた。そして静けさに秘められた木々のざわめきは神秘的で別世界にいるようだった。(と思ったけど今いる世界自体別世界だと後で気付いた)
「えっと、マカロニの森?」
「マカラーニャですよ」
せっかくのモノローグもこのマカロニ発言でパァである。シーモアだけじゃなくて周りの人もクスクス笑う始末。護衛のグラムなんかいつもの五割増で皮肉な笑みを浮かべてる。……慣れたけれど。
もう笑われても良い。気にせずに森を見上げた。
何十年、いや何百年経てばこんなに大きな木々が育つんだろうか。白い色の多い幻想的な森を私を除く全ての人がサクサクと歩き進めていく。当たり前の景色だからだろうか。でも楽しまないなんてもったいないと思う。
「どうしました」
「こんなに綺麗なのにみんな感動してないもんだからもったいないなあと」
「ああ、わたしたちはベベルまでの道中何度もここを通りますから慣れっこなんですよ」
慣れっこだというシーモアたちが羨ましい。ああ、でもみんな仕事なんだから浮かれて景色に見惚れているわけにもいかないんだろう。いかないんだろうけど私はそのあともついついあっちをキョロキョロこっちもキョロキョロと首が忙しいことになっていた。
この森からはベベルと、あとマカラーニャ寺院にも通じているらしいけれど今回は真っ直ぐベベルに向かう。ベベルのさらに北にはもう人が住む街はなく、召喚士たちが進むだけとのこと。シンを倒すためだけの道しかないのだという。
「あ、シーモア」
「はい?」
「シーモア、この森は苦手?」
あの日、シーモアは私は白すぎると言った。きっと色というよりは抽象的な意味合いが強かったんだろう。綺麗だとか、そうではないとか、そういう分類なんだ。シーモアはきっと、自分を綺麗ではないと思っていて綺麗なものを避けたがってる。そこに私が分類されるらしいことは一番の疑問だけど。
「……あまり、好きではありませんね」
苦笑いと共に返ってきた返事にやっぱりと思わざるを得ない。私がこんなにも感動するこのマカラーニャの森をシーモアはどんな目で見ているんだろう。
シーモアが、この美しい森を綺麗だと思える日が来たらいい。
「じゃあ、好きなところさがそう」
「好きなところ、ですか」
「だってベベルに行くときは通る道でしょう?それなら良いところを見つけて気持ちよく通った方が健康的だと思うけどね」
手遅れだといったシーモアに私が何が出来るのかはわからない。私が何かを叫んでもシーモアの根本は変わらないのかもしれない。私のこのちっぽけな手ではシーモアのことを掴む事すら出来ないのかもしれない。
多分、すぐ隣にいるシーモアとの距離よりも私とシーモアの距離はずっとずっと遠い。シーモアは私が近づいてもかわしてしまうし近づかせてはくれない。
それでも、シーモアの瞳に映る世界が少しでもシーモアにとって心地良いものになればいいと、そう願う。
(美しさを君に)