グアドの人の護衛付きでシーモアはグアドサラムを出発した。私はシーモアの隣だ。グラムはすぐ傍についている。
初めての外に私は期待を胸に抱き初めてあの木の街を出た。
「う、わあ」
出た瞬間稲光と遭遇。直後に轟音。と思えばあちこちで稲光と轟音のパレード。驚いて思わず足を止めてしまった。
それを見たグラムは鼻で笑ってきた気がするが気のせいじゃ、ない。あの人笑った。まあ、いいけれど。隣のシーモアも子どもっぽい私の反応にクスリと笑ったけどそれも良い。子どもで何が悪い!
クスクス笑いをおさめたシーモアは私の隣で大丈夫かと声をかけながらここの説明をしてくれた。
「グアドサラムよりも北に行くにはこの雷平原を越えなければなりません」
「雷平原……これ、落雷したら死んじゃうよね?」
「ええ。ですから平原には避雷針があちこちに建てられています」
シーモアが指を差した先を見れば大きな、鉄なのかよくわからないけどそういうのが建っていた。高くそびえ立った避雷針は一帯の雷を吸収するかのように近くの雷を受け止めている。
自然現象らしいけれど聞けば年がら年中ずっとこの天気だという。ありえない。人為的に操作してるんじゃないんだろうか。天気は西から東に流れていくもんなんだよ!……この理屈はここの人には通じないのかもしれないけど。そこまで気付いて考えるのを止めた。現実を受け止めよう、私。
「……とりあえず道には迷わないね」
「避雷針が道しるべになりますからね」
「まあそれもそうだけど、稲光が常にあるから夜を心配しなくて良いよ」
元々夜のように暗い平原だから光は大事だ。
そんなことを真面目に言ったらシーモアが顔を袖で隠して笑い始めた。そんなに面白いことでも言ったんだろうか。とても真面目に考えたのに。
ちらりと周りの様子を窺うとみんな知らん顔。グラムだけがやっぱり鼻で笑ったように私を見ている。
「普通女性は雷を怖がると思っていたんですが、そこまで真剣に話されてつい、笑ってしまいました」
「雷ね、一人だとこわいかもしれないけど他の人がいると案外平気なんだ。……でもずっといたいってほどはないからさっさと抜けちゃいたい」
「あなたが怖がるなら諭して手でも繋がなければならないかと思いましたけど」
「……それ、セクハラだ」
その言葉にシーモアはとても楽しそうに、それから早く抜けてしまいましょうと言った。
平原を抜けるまでシーモアの機嫌が無駄によかった。
(笑わせるのが上手なきみ)