麻のリュックを背負いいざグアドサラムの外へ!
「よろしくお願いします」
「シーモア様の命令だからな」
とてもだるそうに護衛役だというグラムが明らかに見下した目でそう答えてくれた。腕は立つらしいけど明らかに目が『超だりい』と告げているこの人相手に平穏な旅を出来るとは到底思えなかった。
「とりあえずシーモア様とベベルまでの道のりは一緒だ。そこからシーモア様はベベルで仕事を終えてルカでの式典に参加される。お前はベベルでそのまま船に乗りシーモア様が来るまでルカで探索だ」
「じゃあ最初はシーモアと一緒なんだ」
旅の前の顔合わせということでグラムと二人っきりで対峙しているけれどなんとなく、悪い人ではないとわかった。まあ根っからの悪人なんてそうそういるわけじゃないのだから当然といえばそうかもしれない。
麻のリュックを背負ってみたのは少し雰囲気作りがしたかったからでグラムが来る前にきちんと部屋の隅っこに置いてきた。今は待ち合わせにしていた異界の入り口に二人でいる。
「それはそうと、どうしてこんなところで待ち合わせにしたんだ」
「落ち着くから」
実はシーモアの屋敷よりもどこよりも異界の花畑が見える場所の方が落ち着く。ふわりふわりと舞う蛍みたいな幻光虫とか、ああいうのを見ている方がホッとする。
グラムは変人だという目で私を見てきた。まあ、そうだろう。それをあからさまに出してくるこの人は信用できそうだった。グアドの人はあからさまに嫌うか愛想だけ良いかが多くてこういうタイプはあまりいない。嫌いというより呆れているグラムは私のことを嫌ってはいないと、思う。
「グラムは、シーモアのことどう思ってる?」
「批判の声も少なくない中で尽力されてきた努力の方だ」
「そっか」
多分、シーモアが信頼している人の一人なんじゃないだろうか。そんな気がする。きっとグラムという人の良いところは正直なところだ。誰相手でも嘘はつかないんだろう。それは、シーモアにとって好ましいことだ。
半ヒト、半グアドということは私が思っている以上に世間の目は厳しかったらしい。トワメルさんが昔は随分と風当たりがきつかったのだと教えてくれたことがある。それをシーモアは乗り越えて今族長の座についている。どれだけの辛さを乗り越えてきたのか、私には知ることは出来ない。
「本当はシーモアのお供につきたいと思うけど、私のところについてきてくれてありがとう。これからよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げた。お世話になる人だ。もしものときに体を張って私を守ってくれるという人なのだ。これぐらい、当然だった。
でもグラムは少し驚いたらしくて頭を下げている間反応がなかった。
「グラム?」
「…よろしくされてやる」
やっぱり、偉そうだった。
(きみを守る役目)