声が聞こえた気がして、だから私はその声に耳を澄ませようと目を閉じる。その声が聞こえるように。 誰の声かはわからないけど、その声が聞こえるように。必死に叫ぶ声に私の声が届くように。

「ねえ、きみは誰?」

 いつも夢の中で私は誰かの叫んでいる声を聞いて、その声を求めてそこに向かって走ってる。ねえ、きみは誰。きみはどこにいるの。そんなに叫ばないで。ねえ。
 きみは誰。叫ぶきみは誰なの。なきそうな声。きみは、誰。何を叫んでいるの。私に何か出来ることはないの。そんなに痛いぐらいに叫ばれるとなんだか泣きたくなってくる。だから。
 ねえ、きみは誰?


(彷徨う魂)