「ナギ平原って、偉大ね」
「は?」
「いつ来てもそう。私たちのようなちっぽけな人を、抱きしめてくれる」

 いつものこと言えばそれまでなのだが隣の女性はいきなり何を言い出すんだ、とティーダは首をかしげた。
 彼女は時折こうしておっとりとした調子でティーダにはわからないことを口にする。流しておけとカローラな一番の理解者が公言しているのでティーダもならって聞くだけは聞いている。
 ひとしきりナギ平原の風を受け、遠くを見つめて満足をしたのか彼女の興味はティーダに移ってきた。その顔が不満げなものでティーダはうっと怯んでしまう。予想はついていたことである。

「ティーダがあの時うまいことしていたら、私アーロンと組めたのにな」
「……ごめんって」
「私がアーロンと、ってなるときみはユウナと組む予定だったのに」

 どうして師弟で組む結果に、とカローラは嘆いている。
 ナギ平原の壮大さに感心していた姿はもうどこにもなく、今は別行動をするということでアーロンと組めなかったのを悔しがっている姿しかなかった。

「ま、ここで噂の寺院とやらを見つけて、とっととアーロンのとこに行けばいいじゃん」
「簡単に言うわね」
「絶対オレたちが一番乗りしよう!」
「……一番乗りね」

 元気よくナギ平原を歩くティーダにカローラは続く。
 草原は広大で、歩いて探すには少々どころかかなりの難ありである。どうにかならないだろえかと考え、カローラは歩きながらふと思いついたことを口にした。

「ティーダ、チョコボ借りよう」
「は?」
「チョコボ」
「ええ……」

 いくら体力自慢のティーダでもナギ平原で寺院を探し回る、という目的のもとで行ったりきたりするのは無謀である。もしティーダは平気だったとしてもカローラの体力がもたない。
 そういう人はもちろん少なくはなく、ナギ平原ではチョコボの貸出を行っている。飼育にも平原の広さはピッタリで、貸出は好調のようである。

「さあ、行こう」
「……ッス」

 今度はカローラの後ろをついていくティーダ。立場逆転だった。

(Carolla 3)