ユウナとティーダそれぞれに頼んで貸してもらったスフィアをは部屋のベッドの上に並べてみる。なかなかの数々のスフィアが集まると実に壮観だった。
そのスフィアすべてにおいて共通しているのは、ブラスカやジェクト、そしてアーロンが映っているということ。
「よくこんなに集めたわねえ」
感心した目つきでスフィアを眺める。決してスイッチは押さない。
召喚士ブラスカとガードジェクト、アーロンの旅の様子が散りばめられたスフィアは各地に散り散りになっていた。それをユウナとティーダはできる範囲ではあるけれどスフィアが遺されていると気が付いた頃から探し集めている。
押せばそこに若い頃のアーロンがいることをはわかっていたけれどただスフィアをころころと転がして遊ぶだけだ。
「」
「アーロン?」
振り向けば入口にアーロン。
ノックはしたぞと断られるけれど特に部屋にいきなり入られて困る状態でもなかったためどうぞと招き入れる。ただぼんやりとスフィアを眺めていただけだ。
「どうしたの?」
「おまえがブラスカたちのスフィアを持って閉じ籠ったと聞いてな」
「閉じ籠っただなんて。ただ見てるだけ」
本当にただベッドに腰掛けてスフィアをしっと撫でるだけだ。慎重すぎるぐらいにスイッチを避ける手をアーロンはただ黙っている。
「そうか」
「なにかしら? 私がスフィアを再生してすすり泣くとでも思った?」
くすくすと笑うは泣き出す気配などないしアーロンもその口ぶりには苦笑いを浮かべる。
「おまえはそんな奴じゃないからな」
「どういうこと?」
「そんなにやわじゃないってことだ」
「そうかしら?」
「オレよりはよほどたくましいと思うがな」
ぽんと頭に置かれた手には瞬き一つ。堅物の人が実に珍しくやわらかい手付きでを撫でている。
「どうしたの?」
「ユウナが白魔法の修行をしたいらしい」
「ええ、わかったわ。ありがとう、アーロン。大好きよ」
挨拶代わりの告白をアーロンはただ受け止めるだけだしもそれを気にすることなくにこやかに部屋を出ていこうとする。
ベッドのスフィアは放置したままである。アーロンがどうするのだと口を開く前に彼女は扉の前でくるりと振り返る。
「スフィア、そのままにしておいてね。見る見ないは自由よ」
にこにこと去っていくに、アーロンは少しため息をつきながらそれを見送った。
スフィアが開かれたのかどうかは、帰ってきたにはわからなかった。
(Carolla 2)