「ってさ、変だよな」
「そうかしら?」
こてんと首を傾げるそのゆったりとした所作もまたティーダに言わせれば変なのだけれど彼女はその辺も気が付いていないだろう。
飛空艇で移動中、運転に関わらないティーダももこれといってすることもなく、二人でなんとなく外の景色を眺めながら話をしていたところだった。
「ああ。シンを倒す旅だって、みんななんだかんだピリピリしてるけど、はいつものんびりしてる」
どうして、とティーダはそれを言われてもなおにこにこ微笑んだままの彼女に問いかけた。
「そうね、私、スピラの運命をきちんと受け止められてないだけなのかも」
ティーダより年上の彼女は言葉使いはいつも丁寧で、物腰も柔らかい。ふわりとほほ笑むとき等、まるで花のようだとティーダは思う。
そして彼女の発言にティーダは思い当たることがある。思い当たるというか、その点があるから彼女は周りの状況と一線を画しているともいえるかもしれない。
「……はアーロンしか見てないんだった」
「ええ、そうねえ」
優しいかわいらしい彼女はアーロンのこととなると丁寧さは変わらずとも返事は早かった。
微笑んで照れることなく肯定した通り、彼女はアーロンのことを好きだと公言している。
「アーロン、愛されてんなー」
事実、は最初からアーロンのためにここにいると宣言している。
今思えば召喚士を前にしてかなりすごい発言だった。召喚士についているガードと一緒にいるためだけに旅を共にするとこのおっとりした雰囲気の女性がそこだけは譲らず、誰にも反論を許さなかった。
今は当たり前のように受け入れられているけれど少しだけスピラのことを理解したティーダはそれがなかなかに突拍子もないことだと今頃ようやく理解してきた。
ただ彼女はアーロンの傍にいたいというだけあって、剣を使うし白魔法も使う。仲間のことを蔑ろにするどころか周りともよく話すし気遣いは実に細やかだ。連携もきちんとできるし、何より戦いの時の彼女は普段の振る舞いとは別人かと思うほど彼女の動きは俊敏で華麗に動いて見せるのだった。
「そういえばティーダ、腕は上がった?」
「もちろん! なんなら、試す?」
挑戦ならいつでも受けて立つ!というティーダ。
試すどころか試されるのはティーダ自身なのだがそこは見栄を張りたい年頃なのだろう。は落ち着いてとティーダの肩をぽんぽんと軽くたたいて落ち着かせようとする。
「飛空艇の中だから、また今度ね」
「今度な! 忘れんなよ?」
「わかったから。剣を出そうとするのはやめてね。白魔法の練習ならできるから、そっちを頑張りましょう」
「あ、ごめん」
ティーダは勢いあまって出していた剣をしまい、ティーダを待つに向き直る。
「んじゃ、よろしくッス!」
「よろしく」
こういう風にとティーダはよく修行をしていて、よくその光景はまるで兄妹のようである。
本日も手厳しい姉が弟を指導するかのようで実に微笑ましい光景が広がっていた。
(Carolla 1)