始めは僧兵として負けたくなくて、なんでも張り合うようにそばにいて、いつの間にか隣にいるのが当たり前だった。張り合うために隣にいるのではなく、好きだから隣にいるようになった。
けれどと目の前の男は私を置いていくのぐらい、わかってた。だから笑って見送る。
「じゃあね、アーロン」
後腐れなく別れてやろうというのにアーロンは苦しそうにしている。もっと何か言われると思ったんだろうか。
この男は私に一切の相談もなく、そして直前までそんなこと一言も言わず、今日、突然ガードになるから別れてくれと切り出してきた。
わかってはいたけれど実際に目にしたら頭にくるかこないかは別の話だ。
最高に決めてやった笑顔で颯爽と立ち去ってやり、そしてもう声の聞こえないところでようやく声を出した。
「あんたなんか、きらいだ」
すまないの一言でおしまい。何も語ってはくれない。ただブラスカという男のガードになるってだけ言うとすまない、で話を終えた。
詰ったりなんかしない。ただあんたが黙っていたように、私も黙って別れてやった。
「よろしく、同僚」
旅立ちの日、私はきれいにまとめた荷物を手に目の前の同僚に微笑んだ。
私がブラスカの奥さんと親友ということも、兄さんがシンに殺されたことも、以前からブラスカにガードになると約束していたことも黙ってた。聞かれなかったから。
元恋人、現同僚は苦虫つぶしたような顔をした。
ざまあみろ。
ブラスカと見慣れない男は不思議そうにこっちを見ていたけれどアーロンからの詰問は免れられそうにないのは確実だった。
(詰ってくれればいいものを)
title:afaik
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